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岡山家庭裁判所 昭和39年(家)753号 審判

申立人 畑山京子(仮名)

相手方 小山友子(仮名) 外一名

主文

被相続人畑山義男の遺産を次のとおり分割して相続する。

一、第一目録記載の物件を申立人畑山京子の相続分として申立人の所有とする。

二、第二目録記載の物件を相手方小山友子及野村伸子の相続分として、相手方等の共有とする。

三、申立人は前記分割した相手方等の取得すべき遺産の不足分として金九万三千円(相手方一人につき四万六千五百円宛)を相手方等に支払え。

四、申立人及相手方両名は岡山市十日市字田住○番、田三畝一七歩の分筆に協力せよ。

本件手続費用は各自弁とする。

理由

申立人は遺産分割の審判を求め、その理由として次のとおり述べた。

被相続人畑山義男は昭和三二年一二月二一日岡山市当新田において死亡し、同時に相続が開始した。相続人としては義男の妻である申立人京子と、義男の姉である相手方両名であつて、民法所定の相続分は申立人三分の二、相手方は各自六分の一である。

相続財産は主文掲記の不動産だけである。

よつてこれを適正に分割せられたい。と述べ相続財産の範囲についての相手方の抗弁を否認し分割の比率についての相手方の要求に同意せずと答えた。相手方等は、相続開始の事実、当事者の身分関係及び相続人の数については申立人主張の事実を認めたが、相続財産の範囲については、主文掲記の不動産の外、第一目録の一の宅地上の建物は公簿上は申立人の所有名義になつているが、右は被相続人義男の建てた家屋を申立人が増改築したもので、本来はこれも相続財産たる性質のものであるから遺産分割の対象とせられたい。尚又亡義男の生前田地を売却した金が約一〇〇万円、又その外は義男の預貯金一三〇万円其の他多くの株券がある筈であるからこれも遺産分割の対象となるべきものである。と述べ且つ又遺産を分割するとしても分割の割合については申立人と相手方等と二分の一宛分割所有すべきことを希望する相手方等の相続分は共有で宜しいと附陳した。

当裁判所は先づ調停手続において、当事者の互譲による円満分割の方法に拠り事を解決せんとして、数次に亘り調停委員会を開いて努力したが遂に双方の意見の合致点を見出せなかつたものである。よつて審按するに、被相続人畑山義男が昭和三二年一二月二一日死亡し、同時に相続が開始した事、本件当事者が相続人たる事、主文掲記の物件が遺産に該当することは公簿上明らかである。そこで先づ本件当事者以外に正当な相続人が存在するか否かにつき職権により按ずるに亡忠雄の父畑山平作の戸籍簿の記載並びに当裁判所の調査の結果によれば平作には二男守があつて(被相続人義男は長男)守は昭和二八年七月三日死亡し、代襲相続人として同人の長男保男、二男進、長女苗子、長女文子(母が違う)の四人が現に存在することが認められるが、本件各当事者の供述並びに夫々の本人の陳述によれば、同人等の父守は、実際は亡義男の父平作(大正一二年九月二三日死亡)の子ではなく、平作の兄某の子であつたが、厄年の子であつたことから、巷間の迷信に従い自分の子として真正な届出をせず、弟平作の子として虚偽の届出をしたものであることが認められる。しからば守は相続人義男の兄弟ではなく従つて同人の子である前記四名も亦代襲相続人たる地位を取得することはない。よつて戸籍簿の記載の如何に拘わらず、同人等は相続人ではなく、真正の相続人は本件当事者三名のみであることが明らかである。

次に相続財産の範囲について調査するに主文掲記の不動産が相続財産たることは公簿上明らかで当事者間も争ないが、相手方等は右の外に第一目録の一の宅地上の家屋が相続財産であると主張するが、これを認むべき何等の証拠がないからこれは採用することが出来ない。又相手方等は亡義男が生前田を売却して得た金一〇〇万円及び預貯金一三〇万円並びに株券が存在する旨主張するが、現在の段階でこれを肯認するに足る何等の証拠なく又本審判手続においてはこれが正否を判断するに由なく従つてこれを採用することが出来ない。又相手方等は申立人との分割の比率を二分の一宛と主張するが、これは法律上何等の根拠がないから、申立人と相手方と合意の上でない限り、本審判手続においてはこれも亦採用することが出来ない。

よつて民法所定の相続分の比率により分割するに、本件遺産の内鑑定人の評価額は土地の合計額七三九万二、二〇〇円建物一七万〇、〇〇〇円なるところ、建物は現に申立人が居住する申立人の個有財産たる住宅に付属したもので分割に適当でないから全部を申立人の所有とし、残余の土地の内第一目録の四、第二目録の一の田は南北に細長く、これを東西に境界線を設定して分割するも、その利用価値と価格に左程変動を生じないから、これを二等分し(但し申立人取得分は相手方分より一歩少い)その南側を申立人、北側を相手方等の所有とし、その他の物件一切を民法所定の割合により分割するときは、総計七五六万二、二〇〇円この内申立人の相続分は約五〇四万一、四〇〇円、相手方両名の相続分は合計約二五二万〇、七〇〇円なるところ、主文掲記の申立人の相続所有すべき遺産は約五一三万四、二〇〇円、相手方等のそれは二四二万八、〇〇〇円で、相手方等の取得分は約九万三、〇〇〇円(計算上は九万二、七〇〇円であるが端数切上げ)の不足が生ずるから、申立人は相手方等に対し右不足分を現金で支払い、もつて過不足なからしむべきものである。

又申立人は第一目録の五、記載の家屋については相続開始後、申立人において必要な修理費を少くとも一万五、〇〇〇円以上支出したから、右は相手方等も相続分に応じて負担すべきものであると主張するが、右家屋は申立人居住家屋の一部として専ら申立人が使用収益していたものであるから、その維持費も亦申立人が単独で支出するは当然であつて、相手方等が負担すべき筋合のものではない。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 永江達郎)

第一目録

一、岡山市富田十の坪○○○番地

宅地 一三七坪六四勺

二、同所 ○○○番の二

田 二畝二九歩

三、同所 ○○○番の二

田 八畝一三歩

四、同市十日市字田住町○番

(現在三畝一七歩の内分割して南側)

田 一畝二三歩

五、同市富田○○○番地所在家屋番号同町○○番の二木造枌葺平家建居宅一棟建坪一二坪九合六勺

第二目録

一、岡山市十日市字田住町○番

(現在三畝一七歩の内分割して北側)

田 一畝二四歩

二、同市富田先正池○○○番四

田 四畝一一歩

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